南投県集集鎮のローカル列車車両が、動く美術館に

台湾鉄道は8月20日に彰化県の二水車站と南投県の車埕車站を結ぶ集集線において、新たにデザインされた車両「国立集集美術館」の運行を予定していると発表した。

Facebook(江孟芝さん)より引用

この車両デザインを手がけたのはデザイナーの江孟芝さん。現地の文化をシンプルかつ大胆に表現し、「美術館」として歴史的な特色を違った角度で提示している。

車両の全面を覆うバナナ色は集集の主要作物である「山蕉(バナナの品種)」から発想を得ており、シンプルで視覚に強い印象を残すデザインである。またバナナ以外にもベンガルヤマネコがモチーフとして取り入れられている。

Facebook(江孟芝さん)より引用

車両天井に年表形式で集集鎮の重要な出来事を時系列にまとめて中国語と英語で表示している。

車両の真ん中にあるアーチ型の門に「集集線20の浪漫」と称し20箇所の見所を紹介するグラフィックが展開され、現地の産品「バナナアイス」が可愛らしく車窓のカーテンに描かれている。

Facebook(江孟芝さん)より引用

この列車を読み解く上で時間軸が非常に重要となっているが、車掌室へのドアの両脇には、日本統治時代のスタイルで制作された路線図や、時刻表が掲示されておりノスタルジックな印象を体現している。

床には、バナナのテキスタイルが用いられ、車内のシート座席はバナナの果肉の色に合わせた乳白色になっている。そのシートには、921大地震地の記事が全面に掲載されている新聞がプリントされている。この921大地震地は20年前の1999年9月21日に集集鎮を襲い2,400人余りもの尊い命が亡くなるほど大きな被害をもたらした。

既存の路線を通る列車以外に集集鎮は何も変わらないが、違った視座をこのデザインが提供をしている。過去の悲しい事実を上書きするのではなく、その記憶を踏まえた上で、新たな捉え方でこの集集鎮を感じ再発見できる「国立集集美術館」は洗練されたコンセプチュアルなデザインとなっている。

なお台湾鉄道は、今年の9月下旬から4両編成で1年間、国立集集美術館の運行を予定している。